静寂のconcerto

Design, Product Design

デザインスキル, デザイン組織, マインドセット

デザイン組織・デザイナーの生産性についての議論において、デザインの仕組みや組織体制、デザインシステム、デザインレビュー、つまりデザインのワークフローに関する議論が行われる事が多い。確かに土台・仕組みを改変しupgradeする事でデザイナーの生産性は大幅に上がる事は確かだが、昨今、デザイン制作の仕組みの方に目が行きがち、偏重気味に見える。確かにデザインの仕組み化は大事だが、それよりも大事な事は「デザイナー自身のスキルが高い事・デザイン制作速度が早い事・デザインのナレッジ全般を有している事・コミュニケーション能力が高い事」、つまり「デザイナー自身の確固たるスキルセットが確立している事」である。スキルの低いデザイナーが集まり精度高いデザイン組織の仕組みに乗っかった所で大きなインパクトは創出出来ない

デザイナーの生産性は以下の式で表す事が出来る

「デザイン制作の仕組み × デザイナーのスキルセット = デザイナーの生産性」

前者にばかり目を向けていてもあまり意味はない。大事なのは後者。デザイナー自身のマインドセットやスキルセットの有無が生産性の数値を決める。デザイン制作における仕組み作りのナレッジ・フレームワークは体系化・一般化された今、差を生むのはデザイナー自身の能力の差であり、デザイナーのキャリアの扉を切り開く鍵となるのは「デザイナー自身のスキルアセット」である

仕組みは多層化している。デザイン組織という仕組みがあり、その中にデザイン制作に関する仕組み・ルールがあり、その中にデザインシステムやデザインレビューと言った仕組みがあり、その中で活動するデザイナーのデザインフローにもレイヤーのように重なる個人に閉じた仕組みがある。例えば、Figmaの使い方には一定のプロトコルがあり、それも仕組みである。デザイナーは、そのプロトコルをそのままインストールし、デザイン制作に活用している。同じような概念は他にもある。ユーザビリティテスティング、コンポーネントデザイン、Studio、v0等々。デザイナーは、自らのデザイン制作フローの中に様々な仕組みをインストールし、自らのデザイン制作速度を高めようとしている。つまり、デザイナー自身のスキルセットも「デザインの仕組みの集合体」と言える。一方、それらはデザイナーの中に閉じたものなので、デザイナー自身の血肉としてのスキルセットと捉えることも出来る。結局の所、「デザイナー個人のスキルセット」という概念は幻で、全ては仕組みの構造体であり、デザイナーはその仕組みの中で動かされている虚像に過ぎないのかもしれない

デザイナーのマインドセット。Figmaはデザイン機能の集合体であり、それは仕組みであり、人はそれを「ツール」と呼ぶ。デザイナーは、様々なツールを使い熟し、センスを磨き、デザインアウトプットを作る。そう考えた時に、デザイナー同士の差は何処から生まれるのか?私は、「ツール」と「センス」の間にある何かから生まれるような気がしている。それは「マインドセット」である。平たく言うと「執着心」。過去の過酷な経験を経た事で結果的に身に付いた「mind」の「asset」の「setup」。執着心が生み出す集中力と胆力。その結果が生まれる精度の高いデザインアウトプット。その過程で身に付ける事ができるのが「デザインセンス」

「センス」と言うと天才にしか備わっていないもの、閃き、感性と言った印象を持つ人は多いと思う、が実際は「センス」は執着心や胆力の結果に過ぎない